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「…美知流さん、僕は今死体役なんで心臓は止まってるんですから、気にしないでください。」
「死体が顔を赤らめたり、しゃべったりするかぁ?」
「……。」
本城のツッコミにも答えず、ミノルはだんまりを決め込んだ。
「あ~らら、ミノルの奴なりきっちゃったよ。美知流、続けて。」
「はい。心臓の音確かめてるとき、隣の部屋のドアの音が聞こえて、慌てて部屋を出たんです。そしたら…。」
「誰かいたのか?」
「顔は見えなかったんだけど、青い服を着た人が見えて。この応接室と隣の部屋って通じてるからひょっとしたら犯人かもと思って追いかけようとしたんだけど、すぐに見失っちゃって。そのまま帰っちゃったんです。」
「どうして通報してこなかったんだ?」
「わかんない…。パニクってたのかも。後で本城さんに会ったときも、話さなきゃって思ったのに何からどう話していいかわからなくなって。すぐに言わなくてごめんなさい。」
頭を下げる美知流に、本城は笑顔を見せた。
「いいさ。話してくれてサンキューな。質問いいか?」
「あ、はい。」
「最初に壷が落ちそうになって受け止めた時、拭いたか?」
「ううん。ただ戻しただけ。」
美知流は首を横に振る。
「そっか。じゃあ、青い服ってのはどんな服だったかわかるか?」
「えっと……よくイベントでスタッフの人が着てるような、あんなジャンパーみたいに見えたけど…。ズボン履いてたから、男の人やと思います。」
「青いジャンパーの男…か。この暑い夏にジャンパーなぁ…?おい、ミノル?」
「……。」
「ホントに死んじゃったかな?美知流、ミノルはほっといて帰ろうか。」
「そうですね。」
美知流は本城に合わせ、本城と出ていこうとした時ミノルが飛び起きた。
「ちょ、ちょっと見捨てないでくださいよ!」
「あれ?生きてたの?」
「この通り、ピンピンしてますよ!」
本城とミノルのやりとりを見ていた美知流はクスクス笑った。
「いつもこうなんですか?」
「そうなんですよ。美知流さん、本城さんに何とか言ってくださいよ。」
「え~?いいんじゃないですか?面白いから。」
「そういうもんですか?」
ミノルが怪訝そうな顔をする。
「そういうもんだよ。さ、行こう。」
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