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 代官署刑事課。刑事達がのんびりと談話していると、突然デスクの上の電話が勇ましく鳴った。 ミノルが受話器を取り、みんながミノルに注目する。 「ハイ、代官署刑事課です。」 『あの、そちらに本城さんて…いますか?』 受話器の向こうで女の声が話す。 「本城…ですか?」 ミノルが本城の方を見ると、本城が近づいてきた。 「俺か?」 ミノルに訊く。 「えぇ。若い女性です。」 ミノルはそう言うと電話口に『少々お待ちください。』と告げ、受話器を本城に渡した。 「もしもし?本城ですが。」 『あ、本城さん?すぐに3丁目のエビス銀行に来てください。今そこの車に銃を持った男が二人います。』 「え?もうちょっと詳しく聞かせてくれないか?あなたは?」 『車はグレーのライトバン。早く来て。きっと銀行強盗やと思いますから。』 「あ、おい、ちょっと!」 電話の女は本城の質問には答えずに、言いたいことだけ言って切ってしまった。 「誰からでした?」 ミノルが訊いた。 「さあ?」 「でも本城さんを指名したってことは、知ってる人なんじゃないですか?」 順子も話に入る。 「いや、声には聞き覚えなかったな。」 「ところで本城、その電話の内容は何だったんだ?」 武田も加わる。 「はっ、それが3丁目のエビス銀行付近で、銃を持った男がいるらしいです。」 「なにっ!強盗か!?」 「ガセじゃないんですか?」 タクも口をはさむ。 「さぁな、案外本当かもしれないぜ?もうすぐ…3時だしな。」 そう言って本城はフフンと笑った。 「本城!何のんきに言ってるんだ!すぐに行ってこんか!」 武田が怒鳴り、本城とミノルが弾かれたように外へ飛び出していった。 「電話をしてきた女性は一体誰だったんでしょうね?」 エビス銀行に向かう車の中で、ミノルが本城に訊いた。
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