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「あ、お構いなく…。」
ミノルにアイスコーヒーを入れて渡すと、美知流は奥の寝室へと入っていき、10分ほどで着替えて出てきた。
「…なんか変ですか?」
見慣れない制服姿で部屋から出てきた美知流を、まじまじと見たミノルに訊いた。
「あ、いや。制服ですか?」
「そうなんですよ。喪服って持ってないし、制服なら礼服代わりになるって聞いたんで。用意オッケーです。お待たせしました。」
「それじゃ、行きましょうか。」
ミノルの言葉で二人はマンションを出、通夜が行われる玲子の実家へと向かった。
30分ほど車を走らせ玲子の実家へ着き車を降りた美知流を、誰かが呼んだ。
「美知流?」
「兄ちゃん!いつこっちに?」
美知流を呼んだのは、美知流の兄、透瑠(とおる)だった。
「夕べ連絡もらって、朝一の新幹線で来たんや。…そちらは?」
美知流の後ろに立つミノルを見て、透瑠が訊いた。
「あ、紹介するわ。こちらは代官署の原田刑事さん。」
「原田です。」
ミノルは警察手帳を取り出すと、透瑠に見せながら挨拶をした。
「代官署の…。話は美知流から聞いてます。なんかお世話になってるそうで。俺はコイツの兄の本庄透瑠です。」
透瑠も挨拶をすると軽く頭を下げた。
「元気してたか?」
「うん。兄ちゃん達は?」
「元気やで。なぁ美知流、夏休みやねんしたまには帰ってこいよ。母さん心配しとったで?」
透瑠の言葉に美知流の顔が曇る。
「うん…わかってるよ。ウチ、お焼香してくる。」
そう言って美知流は、逃げるように家の中へ入っていった。
「こんばんは…。」
美知流が玲子の両親に声をかける。
「美知流ちゃん。わざわざ来てくれたの?ありがとう。」
「いえ。玲子さんにはよくしてもらいましたから。本当は明日の葬儀にも出たかったんですけど…。」
「ありがとう。その気持ちだけで十分だよ。私共よりもむしろ、透瑠くんの方が辛いだろうに。もうすぐ結婚という時に……くっ…。」
玲子の父は堪えきれずに涙をこぼした。
「おじさん…元気出して?犯人は絶対捕まえるから。それで…訊きたいんですけど……いいですか?」
美知流は申し訳なさそうに言ったが、玲子の両親は快く質問に応じた。
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