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「玲子さん、兄ちゃん以外に付き合ってた人がいたとか、親しい男の人がいたとか…そんなことはないですか?」
「お恥ずかしい話、昔悪かった時期があって、その頃には何人かとお付き合いしていたこともあったみたいだけど…透瑠さんとお付き合いし始めてからはそんなこともなかったわね。お友達は何人かいたみたいだけど。」
「そうですか…。」
「そう言えば。電話でよく高井さんて方の名前を言っていたわ。会社の方らしいんですけど、よくしてくれるんだって。」
「高井さん…?って、経理部の?」
「よく食事に連れて行って貰ってたようです。結婚前の大事な時期に、そんな誤解を招くような事は控えろと注意したことがあったんですが、高井さんの恋人も一緒だから心配ないとか言って…。」
「高井さんの恋人も…。あ、ひょっとしてこの人ですか?」
美知流は玲子の部屋から持ってきた写真を見せた。写真には玲子の後ろに高井が社員らしき女と一緒に写っていたが、玲子の両親は首を横に振った。
「話で聞いただけなので、どんな方なのかまでは…すみません。」
「いえ…。おじさん、おばさん、ありがとう。絶対犯人捕まえて報告にくるから。」
「美知流ちゃん、ありがとうね。」
美知流は両親の手をぎゅっと握り力強く言うと、焼香をして部屋を出て行った。
外ではミノルが待っていた。
「ミノルさん、おじさんとおばさんに話聞いてきました。」
美知流は聞いた話をミノルに報告し、ふと見ると兄の透瑠が空を見上げて立っていた。
「兄ちゃん、そんなところでぼーっと立ってたら、蚊に刺されんで?」
「ほっといてくれ。…くそっ、何であいつが殺されなあかんねん!…ちくしょう!」
「兄ちゃん……。な、なぁ、兄ちゃん。どっか泊まってるんやろ?送ろうか?」
「いや、今日はずっとここにいるから。お前は気ぃつけて帰れな。」
「う…うん…。」
透瑠は弱々しく笑顔を見せると、家の中に入っていった。
「ミノルさん、おじさんやおばさんの為にも、兄ちゃんの為にも、早く犯人見つけよ?」
「えぇ。さ、帰りましょうか。」
「はい。」
ミノルと美知流は玲子の家をあとにした。
「すっかり遅くなっちゃいましたね。」
「ホンマですね。今日はいろいろあって疲れちゃった。」
ふぅと溜め息をつく美知流。
「明日はタクと青いジャンパー探しでしたっけ?」
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