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「…はぁ」
「なんでため息やねん!」
そりゃあ…期待して振り向いたら尼波だったからに決まってるじゃないか。
とは言わないのが僕の優しさ。
「なんでもないよ!」
自称天使の微笑みで宣言すると尼波の頬が少し緩む。
「な、ならええか…取り敢えず、ビーチボールは人様に迷惑かけそうやし競泳でもするか!」
尼波の意見に、一緒に来ていたクラスメイトが次々と賛同する。
なんだかイヤな予感が…。
「逃がさへんで?」
危険を察知してプールから脱出しようとしていた僕の前に、悪魔が再来した。
死亡フラグは回避しなけれ――
「優勝商品は入江イジリ放題に決定!」
尼波が高らかに宣言した。
…入江が賞品!?
「えぇ!?俺がやるのか―」
「僕も出る!」
戸惑いを隠せない入江を無視して僕も宣戦布告をした。
だって中学生にあるまじきあの髭を、イジリ放題だなんて!
水泳が苦手なことを頭の隅に追いやってからスタート台に立つ。
「位置について、ヨーイ」
ふと左を見ると、審判をしている尼波が視界に入った。
僕と目が合った瞬間、尼波が不敵に微笑む。
「ドン!」
バチン!と派手な音が市民プールに響き渡った。
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