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恭壱朗は思わず磯原に尋ねた。
するとそのやり取りを聞いていた久司が、
「磯原さん、与太話はその辺で止めておけ。あれは明らかにいわゆる古史古伝に惑わされた馬鹿の書いたものだ。」
と言った。
「久司さん、いくらなんでもそれは……。磯原さんの言う事がホントであればの話ですが、当時の我が社は外部の者に経営権を握られた時代。創業時からいた方々の中にはその事が苦になり古史古伝に救いを求めた人もいた筈でしょうに。」
蓮子が久司に言った。
「歴史は繰り返す、姿形を変えて、か……。 」
恭壱朗がそう呟いた。
「餘部、出来るものなら摂西の『ミネルバの梟』を連れ戻してみよ。多分無理だろうがな。だか妄信からくる『恐れ』を払いのける事が出来るならば、もしかしたら連れ戻せるか、新たな梟を連れて来る事が出来るかも知れんぞ。」
久司はあえて嬉々とした表情をすると、恭壱朗にそう言い放った。
【『ミネルバの梟』了】
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