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恭壱朗はそう言うと、中年太りの男――摂西電鉄の代表常務取締役の一人である坂元(さかもと)秀也(しゅうや)のほうを見た。
「恐縮です、餘部社長。」
坂元が言った。
恭壱朗は昼田と坂元に、
「頼みと言っても、特にこれと言った事でもないが……明日、明後日と摂西の代表三名が席を開ける事になる。そこでだ。」
と言うと、二人の前に歩み出た。そして続けざまに、
「その二日間、お二人に社内の事の一切をお任せしたいと思ってね。」
と言った。
二人は一瞬、固唾を飲んだ。しかしすぐに昼田が、
「社長、お言葉ですが私も明日の会合に同行させて下さい。」
と恭壱朗に言った。
「どうして?」
恭壱朗は昼田に尋ねた。
「今回の件は、私にも責任があります。ですから社長、是非ともお願いします。」
昼田は恭壱朗にせがむように言うと、深々と頭を下げた。
「そう言われてもなあ……。それに昼田さん、たった二日だぞ。私も明後日の午後にはここに戻るつもりだ。」
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