1人が本棚に入れています
本棚に追加
社長室のドアを叩く音に続いてノブが回る音がすると、所々白髪の混じった長い髪を後ろで束ねた、細い眼鏡をかけたスーツ姿の女性が社長室に入ってきた。
「失礼します」
その女性はうやうやしく恭壱朗に頭を下げた。
「お、枝梨(えなし)さん。」
恭壱朗は彼女に会釈をした。
彼女の名は枝梨(えなし)蓮子(はすこ)。
十数名いる摂西電気鉄道の取締役の一人だが、彼女はその中でも上位の『代表専務取締役』である。
「何か、いい話でも?」
恭壱朗は蓮子に尋ねた。
「いい話も何も。」
彼女は笑顔でそう言ったが、すぐにその表情を曇らせた。
「その表情からすると、どうしても気が気でならない事があるんだろ。」
恭壱朗は再び蓮子に尋ねた。
彼女は何か言いかけようとしたが、それを押さえるかの様に黙り込んだ。
それを見た恭壱朗はすかさず、
「まさか『フューチャーロード』の件か?」
と彼女に念を押すかの様に尋ねた。
最初のコメントを投稿しよう!