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「服装、よし。持ち物、よし。心の準備、よし」
待ち合わせ場所――神社の駐車場――にたたずみながら、何度目かわからないチェックをする。
この作業は、デートを目前にした不安の解消の他にも、待ち合わせ1時間前からここで待っている僕の暇つぶしの役割も担っている。
……仕方ないじゃないか、藤原さんが来るのいつも待ち合わせ三十分前以上なんだから…。待たせるのは僕のポリシーに反するよ。
「うん、だいたいOKだね。それじゃ財布…悪し!」
これも何度となく確認したことだ。
以前は常に諭吉さんの詰め所のような状態だったのだが、記念すべき一度目の藤原さんとのデートによってその詰め所は数時間のうちに解体された。後悔はしていない。
……ちょっとだけしか。
さて、僕が自分点検を終え、その後の恒例となっている辺りの見回しをすると、それは目に入ってきた。
……断言しよう。僕は藤原さんの事を疎ましく思ったことなんて一度も無い。常に憧れや愛情の視線、デート以降はちょくちょく困惑の視線をまじえて見ていた。
だから、僕がこう願うのは絶対に初めてなのだ。
藤原さん、こっち来ないで!
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