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遅い
ふぅ、と息をひとつついて前髪をかきあげる。
賢そうな顔立ちに切れ長の眼が少し憂いを帯びて映えている。
長い黒髪を揺らして立ち上がると、モノ江は暗闇を睨みつけながらいつまでたっても来ない待ち人を想った。
まったくもう
お父さんたら何してるのかしら?
どこではぐれたのかも忘れたし
どうしてはぐれたのかも忘れたけど
自分の父が「ここで待ってろ」と言い残して…言い遺して、消えてしまったのは覚えている。
聡いモノ江は、なんとなく気付いていたが
大人しく待ち続けている次第なのである。
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