キュッキュ君の温度

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どれくらい時間が経ったのかな分からない     その子は俯きかげんで座り込んだまま動かない       ぼくはそんなのを まるで当たり前みたいに感じながらてすりの錆を    落ちない冷たさを     さすっていた訳なんだけどね       ちらっとその子をみたら(勿論、その子は気付いてないだろうけど)なんだか、急にたまらなくなってさ                 そっと片手をその子のあたまに           ちょっとなでてみた     女の子は気付かなったのか知らんふりしたのか分からなかったけど   俯いたままピクリともしないんだ       ぼくはやわらかい茶色の繊維をなでるのが気持ち良くて   2~3回なでたら不思議な事が起こったんだ         手の平があったかい         ――あったかいって何だっけ…?――       あぁぼくは知ってる   いきものしか持ってない温度を       この子を通してぼくに移る温度を               ぼくがそっと手を戻すと  女の子は立ち上がった         ぼくの方を見もしないでもときた道を戻っていった             またくるといいな     そしたらまたなでてあげよう                 てすりの冷たさが少し和らいだ気がした
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