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「………もうすぐ、もうすぐだ……」
暗い部屋に一人の男がいた。
彼の指は忙しくキーボード上を動き、文字を打ち込んでいく。カタカタと鳴る音だけがその部屋のBGMだ。
部屋は男1人で使うには思いのほか広く、色々な電子機材が壁に沿うように立つ棚に整然と置かれ、それに乗り切らないものもまたきっちりと床に並べられて安置され、自分が使われるのを静かに待っていた。
天井の明かりも点けていない暗い部屋にはしかし、一つだけ光源があった。
その、男が興奮気味に呟きながら見ているパソコンの画面上には一般人が見ても何の面白みの無い数字と英文字の羅列が浮かんでいる。
しかし、男にとってそれはまさしく啓示だった。
信者にとっての聖典のように。
神様から貰ったお告げのように。
そう、男には映っていた。
だがこれは貰い受けたものではない。
自らが書いたお告げ。
自らが指し示した道。
自らが描いた物語。
ようやく始まる。
これを起動すれば自分は神にも等しい存在となるだろう。
何故なら自分は誰もまだ踏み入れた事のない世界に行くのだから。
「……システムアクセス。プログラム『神の記述』を開始する」
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