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「先生。嘘はダメですよ~。だって次は古典ですよ」
生徒の一人がそう言うと苦笑いして先生は答えた。
「バレたか。実は古典の担任の先生は今度の校外学習の下見でなー。というわけで今から自習だ」
自習という言葉に生徒から歓声が上がる。
「先生、校外学習の行き先の『映像先端技術研究所』ってどういう所なんすか?」
令の前の席の男子が質問する。
「最近出来たらしくてな。一般公開もされている場所だ。今回はなんでもこの学校の卒業生のツテで行くらしい。ま、内容はお楽しみだな」
そうもったいぶって先生はまだざわめいてる生徒達に「静かに自習しろよ」と声を掛けて教室を出た。
「『映像先端技術研究所』ねぇ……」
「湊、知ってるの?」
先ほど先生に質問した前の席の男子、松本 湊(まつもと みなと)に令は訊いた。
「いや、俺もよくは知らないな。名前くらいなら聞いた事はあるかな」
「そうな「レイ、オセロするよ!!」
会話している二人の間に割り込むようにして彩音がオセロ盤を令の机に叩きつける。
「………僕はリョウだってば」
「令、お前それ毎回言うよな。疲れねえの?」
「……疲れるよ」
「ほら令、昼休みの続きするの!!」
息巻く彩音と対照的に令は溜め息をつく。
「今は自習の時間だけど……」
「周り見なさいよ。誰か一人でも勉強してる人いる?」
彩音の言うとおり、教師が出た後の教室では真面目に勉強しているのは一人か二人で、後は遊んだり雑談している生徒が大半だった。
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