およそ時速10文字の男

9/11
前へ
/19ページ
次へ
 おっさんがくしゃみをした。 なかなか豪快なくしゃみだ。 男は驚き飛び起きた。     目を何度も擦るがおっさんは依然ペン立ての後ろにいる。 そのとき本当に本物のちっちゃいおっさんが目の前に存在しているのだと悟った。   おっさんは少し透けている。おっさんはお化けか。 透けていると一言で言っても、体の場所によって透明度が違う。 半透明のところや完全な透明のところもある。 完全に透明なところは穴が空いて見える。気持ち悪い。 おっさんの濃さがまばらで気持ち悪い。 そんなおっさんだが、男の恐怖や不安やその他もろもろの防衛本能は働かない。 むしろ好奇心。 ちっちゃいおっさんが恐ろしいはずがないではないか。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加