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彼が後ろから抱きしめていた私の肩に手をかけて正面にむき直させた。
「誰が誰を好きだって?」
意地悪な笑みを浮かべて私を見つめた。
ああ。
もう!
睨みつける彼も私のドストライク。
私は少し見上げる形で見つめ返す。
「かわいいな…」
ぼそっとつぶやいた。紅ちゃんのその言葉が私に向けられてるとは思わなくてきょとんとした。
「蒼子に言ってんだよ。聞いてる?」
私の頬の涙の跡を彼の指がなぞる。
「俺も好きだよ。やっと気がついた。」
「えっ」
「好きなの!好きなの!好きなの!!…てか。」
「なっ…人の真似して!!」
微笑んだ彼の顔が見えた次の瞬間、唇が塞がれた。
軽いキス…
顔を離してまたみつめる。
「好きが何か考えてなかった。子供の頃からずっと。独りが当たり前だったから。でも蒼子は俺のそばに居てくれたもんな。ありがとな。居るのが当たり前なんて考えちゃいけないな。」
「紅ちゃんは一人じゃないよ。紅太くんもいるじゃない。私だっているわ。何があってもそばに…いさせて」
もう一度、唇が重なった。
はじめは触れているだけの軽いキスから次第に深いキスへと変わった。
思いが強くなるキスだった。
紅ちゃん、好き。
私は幸せだった。そんな私達を物陰から司が見つめてるとも気づかずに。
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