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「楓、本当に声優なんだな」
俺の問いに楓はコクリと頷いた。
「じゃあ、信じるよ。それで楓は今回はどんな役なんだ?」
すると楓の顔は眩しいくらい輝きだし、鞄から俺と同じ台本を取り出した。
「わたし、こんかいこのやくなの」
そう言って台本のCASTのページを開き、『柊麻由』の名前を指差した。
柊麻由は今回の作品の準ヒロイン的役柄で主人公の血の繋がらない妹というありがちなポジションである。
「やっぱ売り出してるだけあって大役じゃないか」
俺は満面の笑みで見つめてくる楓の頭を撫でてやった。
楓は頬を赤らめ、下を向いて黙り込んだ。
後ろでは、「まあ、僕はヒロインだけどね」と楓の喜びに釘を刺すような声が聞こえたのだが楓には届いてないようだ。
──そんな話をすること10分、スタジオに到着した。
スタジオは黒に近い灰色の建物でいかにもスタジオっていう雰囲気を醸し出していた。
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