深窓の姫君

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 ネヴラスカはその様を見て胸が裂ける思いがした。幼少の頃は奴隷のブラキオス人が目の前で鞭打たれながら死んでも嫌悪感しか感じなかった彼女であったが、歳を重ねるうちに彼らに課される残虐な仕打ちに疑問を抱くようになった。  コーランは彼女と同じ思想を持つ数少ない人物の内の一人。彼はブラキオス人達の苦しみに目を背けることができず、かと言って周りから距離を置くこともできず、身を切り裂くような苦悩に日々苛まれている。  彼は周りの歓声を聞きながら、己が辱められながら引き回されているかのように感じていた。早くこの苦しみが終わることを願いながら、永遠とも思える深い悲しみに打ちのめされた。辛かった。自分の立場が情けなく、無力で、怒りに身体が震える。  彼は皇帝の勝ち誇ったような視線に気付き、最後尾を任されたのは主からの嫌がらせであることを悟る。先日狩りについて遠回しに批判したことをまだ根に持っていたのだ。奴隷達は夜、大規模な競りにかけられる。男達は死ぬまで過酷な労働に従事させられ、女子供は大規模農場、その中でも見目好い若い娘は貴族の家で下働きにされることだろう。表向きは。真実、愛人として。実際は愛など無い、ただの欲望処理に過ぎないが。
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