深窓の姫君

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 延々と広がる大海、澄み渡る空の下に大小様々、無数の島が散在しているスキーアラン。千代も昔から人間の二大勢力、ムーナ人とブラキオス人は世界の支配権を懸けて熾烈な争いを繰り返し、秀でた魔法の力を駆使して戦ったムーナ人がブラキオス人を隷属して三百年の月日が流れた。  異種族達は繁栄を極めたムーナ人、彼等に敗北し、転落したブラキオス人を前に衰退し続け、今や世界の片隅で細々と生きながらえるのみ。  スキーアラン東部、ルター島にムーナルンド帝国はそびえ立っていた。数多の国の中でも強大な力を有する独裁国家。国の中枢は支配民族であるムーナ人が占め、未曾有の数の隷属民ブラキオス人達の血と犠牲の下に成り立つ。  今から二百三十年前、カミー王朝に取って代わったルー王朝の皇帝は代々冷酷非道であったが、現皇帝ラーマは極めて残虐な支配者だと知られている。彼こそムーナルンドを現在の権勢を築いた切れ者かつ、優れた君主である。  彼はムーナ人が誇る強大な魔法を行使してブラキオス人の国々を滅ぼし、民を残らず狩り取っては非道の限りを尽くしてきた。絶対的な彼の権力を前に敵対するものは皆無であり、今や傅く民衆に神の如く恐れられている。この無情な国から物語の軌跡は幕を開けた――。
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