深窓の姫君

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 ムーナルンドのラーマ帝は五人の美しい妻、十二人の嫡子、大勢の妾が己の周りで従順に侍っている様を満足して見渡した。ラーマは六十の齢を重ねた今もなお類い稀な美貌を保ち、臣下達はその美と彼に与えられる富と権力に皆目が眩んだ者ばかり。彼の美は自慢の嫡子らに惜しみ無く受け継がれている。 「そろそろ我が戦士達が狩りから帰ってくる頃だ。余も体調さえ優れておれば楽しめたろうに。浅黒い猿共が泣き喚いて逃げ惑う様はいつ見ても愉快だ」  皇帝の言葉に妻達は軽やかな笑い声を奏でた。それぞれしきりに甘く囁きながら擦り寄る。彼女らは皇帝の気を引いて他の妻達よりも彼のお気に入りになろうと常に熾烈な争いを繰り広げている。誰よりも多く皇帝の寝室に指名され、誰よりも多く皇帝の跡継ぎを産む為に。  争うのは妻達ばかりではない。妾はもちろん、貴族の女は皆「皇帝の女」になることを切望する。一度手を付けられるだけで女の一族は一躍力を得、跡継ぎを産めば多大なる権力が舞い込む。女が己の力で駆け上がる唯一の手段なのである。
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