深窓の姫君

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 ネヴラスカは世の不条理を恨んだ。なぜ男は幾人もの妻を持ち、数多の愛人を囲うことが許されるのだろう。なぜ女は夫に呼ばれる日を待ち続けながらそれだけを頼みに生きねばならないのだろう。女が不貞を働けば凄惨な辱めを受け、夫の手で斬首される。  ネヴラスカは何度も男に生まれたかったと願った。女性に生まれたことを恨むたびに一日臥せるほど涙を流し、憤りに胸を焦がした。そのくらいしかすることがない。愛読しているお伽話の主人公のように心から愛されてみたかった。  いきなり引き合わされた生涯の夫に死ぬまで妻として仕え、後継ぎを産み、夫の死後は息子に仕えるしかないという恐ろしい未来に彼女は震えた。 「私って、女って何よ」 ネヴラスカは渾身の怨みを込めて呟く。男を満足させるだけの所有物になるのは皇女として屈辱的だった。この鳥小屋の所有者が変わるだけの話だ。少しも自由はない。 「ああ、悔しい。私は誰の物でもない」 布団に顔を埋めて悔し涙に暮れる彼女の頭をナスカはなだめるように撫でた。彼女にはそれしか出来ない。
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