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天は飽きれるほどに澄み切っている。
まさにうってつけの空模様ではないか。
「しかし、今思うとあっという間のようで色々あったんだな」
「そうね、色々……」
二人は一団の後方を四頭立ての馬車に乗せられ付いていく。
同じくそれで前方をゆく男の後ろを。
一団は、綺麗に舗装された石畳の通りを荘厳とした態度で進んでいた。彼らの纏う銀に光る鎧が余計にそれを際立たせている。
さて、これから街を廻って市民からの祝福を貰いに行かなければならない。
彼らはある場所に向かって通りを進む。
通りの脇には数え切れないほどの人間が、自分を前に行かせろと競り合い蠢いていた。
割れんばかりの歓声が街を突き抜け続ける。
太陽も神々しい光を以てそれを慶祝しているかのようだ。
しかし、よくもこれだけの人間が集まったものである。国中の人間全員がここに集まっているのではないかと思うほどの数だ。
だがそれは無理もないことだった。自分らの為に戦った英雄達が帰って来たのだ。拍手喝采を浴びてやらなくては気が済まない。
そうしない者が果たしていただろうか。
ところが理由はそれだけではなかった。
今回は特殊であったのだ。
「いや、すまん。この話は無しだ」
「ううん、私がどうかしていたわ。もう大丈夫よ」
「そうか」
その『特殊』達はさっきまでとは打って変って、民衆に満面の笑顔を振りまいた。
民は一段と熱狂した。
・・
そう、『特殊』とは彼女達のことであるのだ。
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