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あまりの暑さに思わず飛び起きた。
確か昨日の晩は凍えるほど寒かったはずだ。だから淋しく独酌をして体を温めていたのだが。
もしや未だに酔いが醒めていないのではないだろうか。それとも、あの幽霊が春を集めすぎて夏でもやって来てしまったのだろうか。
そう思わせるほど強烈な陽光が彼女を照りつけていた。
博麗霊夢(ハクレイ レイム)
彼女は『幻想郷』という現代社会とは結界で隔てられた世界で巫女を務めていた。
幻想郷は、中世日本の山村のような風貌の世界である。山には妖怪や神が住み付き、人間と妖怪はある程度良好な関係を保って共存していた。
そんなことはどうでもよい。
無いからだ。
彼女の目の前にソレは無かった。
代わりにあったのは、ところどころに岩が転がり、黄緑の粉が降りかけられ、ゴツゴツしたどこまでも続く、幻想郷とはかけ離れた景趣の大地であったのだ。
霊夢は、一体何が起こったのか分からぬというような顔をして、黄緑の地面にペタンと座っていた。
しばらくして思い出したかのようにようやく声を発する。
「……はて?」
彼女の頭上ではクエスチョンマークがホバリングしているようだ。
だが、それも当然の反応である。
自分が何処かも分からぬ土地に放り投げられているのだから。
「昨日、歯磨いて寝たっけ?」
はたして気にするところはそこなのであろうか。
「気にするところはそこなのか?」
代弁ありがとうございます。
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