第一章

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霧雨魔理沙(キリサメ マリサ) 霊夢の友人だ。幻想郷では、森の中に名ばかりの魔法店を構えていた。とんがり帽子に黒いスカート、白いエプロンと、まさしく魔女という格好をしている。 両腕を頭の後ろに回し、足を組み、隣で寝そべっている友人に、霊夢は実に落ち着いた様子で話しかけた。 「魔理沙おはよう。私が寝ている間にこんなところまで拉致ってくるとは、手癖が悪いにもほどがあるわよ」 彼女はわざとらしい笑みを浮かべつつ、仰向けになっている友人のデコに紙を張り付けた。 この紙はスペルカードと呼ばれるもので、カードの発動を宣言すると、光の玉やらなんやらが大量に散りばめられ、相手を攻撃することができる。 下手をすると死ぬこともあるので、結構危険な代物である。 しかし魔理沙はソレが額にあるのにも動じず、平静と応答した。 「ああ、おはよう。手癖が悪いとは人聞きが悪いな。アレはただ死ぬまで借りているだけだぜ?」 アレというのは本のことである。彼女は手癖が悪いことで幻想郷では有名だった。図書館の主もほとほと手を焼いていた。 「ということはあんたの仕業ね?」 「お、おいおい、そんなこと言ってないぜ」 「じゃあ何でこんな所にいなきゃならないのかしら?」 「私も起きたらここにいたんだ」 「・・・・・・」 霊夢は彼女が嘘を言っていないことを理解したようである。 となると、当然そこで一つ疑問が生じる。 「……ここどこ?」 甚だしく今更な疑問ではあるが。 「そんなの私が知るわけないだろ?……でもこんな真っ平らな風景、幻想郷じゃ見たことないぜ」 それは此処が幻想郷ではないと示唆するものであるかのようだった。
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