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慌てて訂正する。
「子供の冗談です勘弁してください」
うちの娘に何を吹き込んだと怒られるかと思ったが、意外にパパさんは余裕で笑っている。
「わかってる。子供の冗談だ。それにしても少し慌てすぎじゃあないのか? そういう嗜好でもあるのかと疑われるぞ」
つぼに嵌まったのか、パパさんは笑い続ける。
その横でエムエムが、ああでも、と言ったのが聞こえた。
まだ何か投下するつもりか小娘。
「クロエは私のお兄ちゃんみたいだから、結婚は無理かも」
エムエムの発言に場の空気が冷える。
パパさんはそれを聞いても笑みを崩さなかったが、若干苦笑いになっているのは隠せていない。
「やっぱりそういう嗜好なのか」
ああ、気まずい。
恋愛は自由にすればいいと思うが、セックスは十六になるまで待ってくれよとか窘められた。
ジョークと解るが、笑いにくい。スパイスが効き過ぎだ。
「冗談だ」
不適な笑みで言うパパさん。
畜生、なんだこの敗北感。
してやられた気分だ。
とりあえずそういう嗜好については全力で否定し、話題を切り替える。
「お嬢さんがエムエムだと名乗ったんですけど、どういう意味なんですか」
問い掛けにパパさんは、一瞬瞳の光を鋭くした。その変化に違和感を覚える。
「イニシャルだ。名乗るのが遅れたが、間山礼司だ。こいつが間山まゆらで、MM」
そう言うパパさんは、先程の一瞬など無かったかのように、笑みに戻っていた。
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