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今日は余りにも天気が良かった。
冬の空は高く高く晴れ渡り、少し風が出ていたものの、日当にはぽかぽかとした暖かさがあった。
こんな日に家でごろごろしているのは勿体ないと思い立ち、よそ行きの服に着替えた。
しかし遠出をするのは面倒臭かったので、適当に外の空気を吸いつつ散歩、ついでにドーナツを買ってきて午後は優雅に過ごす、といった感じに思考を纏めた。
駅前まで足を運び、ドーナツを購入して帰途に着く。
散歩気分を高めるために行きとは違う道を選んで歩き、公園の前を通り過ぎた時、小動物が鳴くようなか細い声が聞こえた。
気になって園内を見遣ると、中心で小さな女の子が倒れているのが目に入った。
慌てて駆け寄る。
緩くウェーブの掛かった黒い髪は少女の膝の辺りまで伸びていて、ぱっと見た感じ幽霊や妖怪の類かと思ったが、助け起こしてみたところ生暖かかったので人間だと判断した。
「ぅきゅー……お腹すいたよ」
どうやらこの少女は空腹で行き倒れるとか飽食の現代ではありえないであろう行為を素でやっていたらしい。
ホームレスか何かなのだろうか。
可哀相なのでドーナツをあげた。
懐かれた。
そして今に至る。
「あなたのお名前は?」
自分のパパの強さ、格好良さについて一通り話し終えると、少女は僕に問い掛けた。
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