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くりくりのドングリみたいな瞳が僕の目を真っ直ぐ見据える。
少女は近所のお婆さんやらお爺さんやらにモテモテしそうな顔立ちをしていた。
澄んだ大きな目にはキラキラの光。
いまどき少女漫画でもそんなにキラキラしてませんよ。
頬は掴み易そうな丸さ。
そのぷくぷくを揉みしだいたり引っ張ったりしたい衝動を抑える。
そして出来るだけ優しく問いに答えてやった。
「真広、黒江」
聞いた少女はぽかんと口を開け、眉尻を下げて困り顔になった。
その反応は失礼だからねと教えてあげるために、少女の長い髪を頭頂部でちょんまげにしてやる。
「やめて、ええと、どっちが名前? 髪の毛いじるのやめて。マヒロが名前? ちょんまげやめて!」
僕の手を髪の毛から引き離そうと掴んだり叩いたりしてくるが、むにむにしてるだけで全く力は込められていない。
「違う、真広は苗字、黒江が名前」
言いながら髪を弄ぶ。
少女はやめてやめてと呟きながら、僕の腕をむにむにしている。
なんだか小動物チックだ。
割と必死で抵抗する少女を解放してやると、涙目になりながら手櫛で髪を整えはじめた。
時々むーとかうーとか唸っているのが可愛らしい。
そして納得のいくまで髪型を直すとまた僕に向き直り、花が咲くような笑顔で言った。
「じゃあクロエって呼ぶね」
普段あまり笑わない僕も、この時ばかりは思わず顔が綻んだ。
えへへと笑う少女の頭に手を置く。
撫でられてくすぐったいような、気恥ずかしいような表情をする少女に向かい、僕も笑顔で言葉を返した。
「お兄ちゃんと呼びなさい」
少女は笑顔のまま一瞬だけ固まると、また困り顔へと戻ってしまった。
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