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「クロエのお家は遠いの?」
エムエムを家に送り届けるために、あまり通ったことの無い道を行く。
僕の住所と同じ市内、さらには同じ町内だが、こっちの方は何かの店がある訳でも無く完璧に住宅街だし、知り合いが住んでいるという訳でも無いので、来ることは殆ど無い。
というか今が初めてだ。
そんな初体験の場所を、エムエムの手を引きながら歩いている。
エムエムは僕を見上げたり、辺りを見回したりしながら、あっちの方かな、それともあっちかな、と落ち着かない様子だ。
最初は野放しにしていたのだが、余りにも落ち着きが無く、走り回ったり道路に飛び出したりするので、仕方なく手を繋いで歩くことにした。
飽くまで仕方なくである。
エムエムの手はぷくぷくのすべすべだった。
「僕の家は反対方向だよ」
教えてやるとエムエムは、あっちの方向だねと指を差して「私は何でも知ってます」みたいな顔をした。
本当は大分方角がずれていたけど、大正解だとおだてておいた。
エムエムが嬉しそうにしているので良しとする。
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