3045人が本棚に入れています
本棚に追加
「お昼ご飯は何かなー。カレーかなー。カレー食べたいなー。でも昨日もカレーだったし、今日もカレーかもしれない」
家が近づいて来たのだろうか、エムエムは段々とテンションが上がっている。
あとたぶんお腹が減ってきている。
さっきドーナツ食べさせたのに。
二個も食べさせたのに。
それにしてもこの辺りは、良い家が立ち並んでいる。
基本、庭付き一戸建て。
立派な門が構えてるし、二階のテラスは休日にバーベキューでもやりそうな勢いだ。
何こいつ金持ち? 金持ちなの? ドーナツ代返せ。
「あそこがお家だよー」
エムエムが指で示す先には、やはり立派な門とバーベキュー用のテラスを備えた大きな家だった。
緑も多い。
「いいとこ住んでるのな」
「えへへ、パパお金持ちだから」
この笑顔からは微塵も嫌みなど感じないのに、それでも厭味に聞こえるのは、僕の心が荒んでいるからだろうか。
貧乏が憎い。
繋いでいた手を解いてやると、エムエムは家の前まで小走りで駆けて行き、呼び鈴を押した。
僕はその後ろ姿に声を掛ける。
「バーベキューの時は呼んでくれ」
「うん、わかった」
振り返り、エムエムが答える。
冗談のつもりだったのに、自然に返された。
やっぱりやってるのかよバーベキュー。
最初のコメントを投稿しよう!