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パパさんはこちらに歩み寄ると門を開け、エムエムを中へ入れると、不審そうな目で僕を見た。
その挙動に少しむっとしたが、まあ、娘と一緒に妙な男が帰ってきたら、普通はこういう反応をするだろうと納得した。
「落とし物をお届けに参りました」
これ以上無いくらい適当な説明をすると、パパさんは大体理解したというような表情で笑った。
「なるほどね、ありがとう。まゆらもお礼を言いなさい」
エムエムの名前が判明。まゆらか。
どこの国の言葉だったかは忘れたが、確か、孔雀という意味だ。
良い名前だ。
「ありがとーございますでした」
パパさんの手にしがみつきながら、変な敬語で礼を言うエムエム。
その笑顔が今日一番のものだったので、僕もまた表情を和らげる。
エムエムには人を和ませるパワーがある。
たぶん、それを育てたパパさんもまた、善い人なのだろう。
「世話になったようだな。名前を教えてくれ、覚えておく」
「クロエだよ」
パパさんの問い掛けに、僕より先にエムエムが答える。
また例の「私は何でも知ってます」の顔になっているが、楽しそうなので良しとする。
しかし続けてエムエムは爆弾を投下してくれた。
「私のふぃあんせなの」
その言葉に、喉の奥から「うぼぁ」と変な声が出た。
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