序章 鬼の魔窟

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『良いよ良いよ。この位』 私も団子食べてられなかったしね、と悪戯っぽく笑う彼。 「いえ、でも…何か御礼を…」 『ん~。別に良いんだけどなぁ~。あ、じゃあ!』 困ったように笑いながら考える。 そして思い立った考えは 『この男、奉行所まで届けてくれる?』 勿論、私が紐で括り付けておくから安心だよ。 相変わらず悪戯したみたいに笑う彼を女は呆気に見つめる。 『あ…やっぱ、駄目…?』 「え、いいえ!!全然良いです!むしろ、それで良いんって感じなんです」 『良かったぁ、全然良いよ。 ありがとう。 あ、奉行所には男の勝手な営業妨害とでもいっときな』 じゃあね、と金だけ置いて少年は店を出て行った。 店の者は未だ呆気に取られている。 (ポカポカ暖かいな…) 彼は町を歩く。 大して目的などないのだが…。
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