プロローグ

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「君を助けに参上した、正義のヒーローさ!」  はて、俺はいつの間にネコの獣人さんが白昼の校内で短剣を装備した状態で、そんなことを恥ずかしげもなく宣言できるような世界にやってきたのだろうか。  偽物、言わばネコミミカチューシャのような作り物だと思うのだが、目の前でふりふりと揺れる尻尾は実に生き物らしい動きをしていて、頭部に生えるネコミミはまるで何かを受信しているアンテナのように忙しなくぴこぴこしている。……到底、偽物とは思えない。  いつも通りの俺ならば「ネコミミさいこー! だが、その太腿が良い!」と叫んでいるところだろうが、状況がそうはさせてくれない。  なんせ、九死に一生を得た身だ。いや、助けに来たとは言うものの、この女の子が味方だと断言するにはまだ早い気がする。  混乱はさらなる混乱を生み、脳内は今にも処理落ちしそうだ。  俺は、意識が未だ定まらないまま――別に触りたかったわけではない――気付けば眼前のそれに手を伸ばしていた。 「ふぎゃあ!」  ふにゃっと言う擬音と共に尻尾と思われるそれを掴む。 「おぉ……。柔らかい……ふもふも」  感嘆の声が漏れてしまうのは仕方がない。  滑らかな毛並みに、撫でる度にぴくぴくにょろにょろと嫌がるような素振りが堪らないのだ。  一撫でするごとに女の子の背筋に電撃が走ったかのようにピンと伸び、「ふぎゃあ! ふぅー!」と奇声を上げているのが気にならないほど、俺は尻尾のふもふもとした感触に夢中だったわけだが。 「みぎゃあ! ……うっ、も、もうダメ!」  羞恥に耐えられなくなった可愛らしい女の子ボイスが聞こえたのと、俺の顔面にローファーの靴底がめり込んだのは同時だった。  あの跳躍もそうだが、その細身な体のどこにそんな力が潜んでいるのか、後ろでんぐり返しの要領で俺は数メートル転がされ、直撃した鼻の痛みに門絶――するかと思ったが、不思議なことにあまり痛みはなかった。
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