プロローグ

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 グッジョブ! と親指を立てたくなったが、その行動はランスの男の底冷えした声によって遮られる。 「……何をやっているか。貴様ら」  呆れたような響きを伴いながら、その根底には確かな怒気が含まれていた。  その矛先は俺と言うよりも、ネコミミ女の子に向けられているが、俺の緩みかかっていた緊張感の糸を張り直させるには十分な迫力だ。  ネコミミ&尻尾に癒されていたが、忘れてはならない。  男にしろ、この女の子にしろ、その手には武器が握られている。  敵、味方以前の話、男は一度【ゲーム】と言ったが、そこを含めて、俺は俺を取り囲むこの現状を把握し切れていないのだ。 「また、横取りか。《ネコ》よ。その少年は私の獲物だ。邪魔をするのであれば、貴様とて容赦はしない」  人を獲物扱いと来た。 「……何を言うのさ《双槍(ツイン・ランサー)》。今日のステージはポイントバトルじゃない。どうせその内戦わなければならない定め。その時が、少し早まっただけ。そうでしょう?」 「ふん。だが、それがどうした。私は賞品などには興味はない。求めるは血沸き肉躍る勝負のみ。その為の少年だ。貴様の気まぐれに付き合い、私の楽しみを譲るつもりなど毛頭ない」 「彼を【ゲスト】と知っていても、まだ戦うつもり? 彼はここについて何も知らない状態なのに。そんな彼を倒して楽しいの?」 「……ただの【ゲスト】であったなら流石の私の興も削がれただろうが。しかし、少年は違う。私の槍をああも避けられるのは【プレイヤー】連中であろうと、そうはいない。……昂るのだよ。私の心は! 感情は! 少年という存在によって震わされている! この歓喜の迸りを押さえておくことなど出来ぬ!」  興奮する男にそっちの気があるんじゃないかと全力で嫌悪感だが、その迫力に一切動じない彼女には尊敬の念すら覚えてしまう。  だが、さっきから何なんだろうか。《ネコ》だったり、《双槍(ツイン・ランサー)》であったり、ポイントバトル、賞品、【ゲスト】、【プレイヤー】とゲーム用語らしきものが現在進行形で睨みあいを続ける二人から飛び交っているのだが、蚊帳の外である俺にはさっぱり何を言っているのか理解できない。
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