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あー。ひどく唐突になるが、漫画や小説を読み終わってしまうとどうしようもない虚無感に襲われることはないだろうか。
読者である俺達は絵や文字の羅列から何かを感じ取って、その独特な世界に引き込まれ、主人公たちに自己投影する。
時には熱いセリフに心を震わされ、ホラーなシーンには背筋を凍らされ、感動の締め括りに涙を流さずにはいられなくなったりと、日常ではない創作の世界に魅了されている。
だが、それも本を閉じてしまえば一気に現実に引き戻されることになる。
幕の引いた舞台から無理矢理退場させられるような虚しさだけが残されて、やるせない気持ちのまま現実を見据え、漠然とした日々を過ごす。
他の人は知らないが、少なくとも俺はそうだった。
だからというわけじゃないんだけど、シリーズ物の長編小説を一巻から順に買って集めていたのだが、大々的に『遂に完結!』とやられると書店に行っても手に取らないで、そのまま別の本を買って帰ってしまうことが良くある。
先が気にならないわけじゃないが、終わって欲しくない、もっと俺をこの世界にいさせてくれという気持ちが上回って、俺の家の本棚に並ぶ数多の小説や漫画には最終巻だけがないという状況が起きているわけだ。
さて、結局何が言いたいのかと言うと、俺は残念なほどに非日常、異世界、ラブコメ的展開に憧れた人間だってことだ。
と言っても、この日常に愛想を尽かしたってわけでもないし、現実に絶望し切っているわけでもない。
ただ、俺は好きなだけ。
剣を片手にヒロインのピンチを颯爽と助けるような、秘められていた異能の力が開花するような、不良に囲まれる美少女を助けるような――そんなベタな展開が。
だが、いくらそんなシチュエーションを渇望しようとそれは創作と妄想の中でしか叶わない。
もし、そんな世界に行けるのなら死んでも良い……とさっきまでは思っていた俺の考えは今となっては破砕し音を立てて瓦解してしまった。
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