24人が本棚に入れています
本棚に追加
そもそも何故こんなことになっているんだ。
学校の中庭でランス男に殺されかけているなど普通ではありえないだろう。
えぇと、どこまで今日の記憶を遡ればいいんだ?
朝は寝坊して朝食抜きで全力で自転車を漕いで登校して、何とか遅刻せずに済んだけど、途中で自転車がパンクしちゃったんだよなぁ……そのまま漕いじゃったから、こりゃあタイヤごと交換もありえるな。
タイヤ修理よりチューブ交換の方が高いから、無駄な出費が。
あぁ、それで普通に授業を受けて、放課後になって、帰り際に担任からなし崩し的にクラス委員になった俺に初仕事が与えられて、それが思いのほか放課後までかかって、もう完全下校時間を過ぎていたんだけど、夜の誰もいない学校を徘徊したい悪ガキ根性が湧き上がって、それで……あぁ、そうだ。
あの【非常用出口】だ。興味本位で入ったそこで俺は――。
「……っ!」
と、思考を巡らせている暇など少年にはないとでも言いたげな一撃が俺の脇腹目掛けて放たれた。
……反応が一歩遅れてしまったが、体に染み込まされた反射神経に物を言わせ、多少強引に腰を捻って避ける。
「……本気かよ」
もしさっきの一撃が俺を捉えていたら、確実にあの世行きだぞ!
「本気……だと。少年、君は面白いことを言うな。私はずっと少年を我が槍で貫こうとしていたぞ。……生き残りたければ戦え。それが、この【ゲーム】のルールだ!」
背筋に冷たい汗が伝う。
男の表情に一切冗談は含まれていない。いや、人に刃物を向けて笑っている時点で異常をきたしている可能性もあるのだが。
だが、俺にはそうは思えなかった。
確かに笑っている。
俺がことごとくランスの猛襲を避けるのが嬉しいのか、攻撃の手を変えるのでもなく、ましてや緩めることもなく、さらに突き出しの速度は上がっていく一方だ。
そして、同時に男の笑みの歪みもより歪に。
最初のコメントを投稿しよう!