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悪魔と呼ばれる存在
「…かったるいな…じじぃの使い魔か…?」
寮に戻ろうと歩いていた蘇芳は足を止めつぶやく。
周囲にはこれと言って変わったところはない。
―いや…
いつもならあるはずの人通りが途絶えている。
「どうあっても、俺をなんとかしたいらしいな…」
―コト…
呟く蘇芳の前に、白と赤の斑模様の物体が投げられ乾いた音をたてて転がる。
―骨だ。
おそらく、犬や猫などの小動物の骨だろう。
「ギキィ!」
慌てて物陰から現れ出て、骨を拾い上げる小さな影。
毛髪もまばらな頭皮に痩せ細った体。そのくせ、その腹部は異様なまでに膨れ上がっている。
「ギィキィッ!!」
そいつは落ち窪んだ眼で蘇芳を睨み付け、威嚇の声をあげ、そして一気に蘇芳に向かって飛びかかる。
「餓鬼?今更こんな奴をよこした所で、なんの意味もないんだけどな…」
蘇芳は無造作に餓鬼の頭を掴むと、そのまま近くの木に叩きつける。
―ゴシャっ!!
骨の潰れるイヤな音と、体液をまき散らし、餓鬼は木にへばりついた染みになった。
「ギキィ!」
「ギゥィ」
「キィ…」
「ギァァァァッ!!」
周囲からあがる無数の声。
そこかしこの物陰から何体もの餓鬼が姿を現し、我先にと蘇芳に飛びかかってくる。
「数で押せばなんとかなると?」
蘇芳はポケットに手を入れたまま、足技だけであしらい餓鬼達を戦闘不能に陥らせていく。
しかし、いかんせん数が多い。一匹がその鋭い爪で蘇芳のYシャツを切り裂いた。
「ちっ!」
舌打ちをして手刀でそいつの胸を刺し貫く。目標を変え喉を抉り、また別の餓鬼の頭部を粉砕した。
数分後、蘇芳は無傷のままそこに立っていた。
「ちっ…雑魚共が…」
息を切らせることもなく呟く。
その時、更に強大な気配が近づいている事に蘇芳は気付いた。
「…かったるぃな…」
呟き蘇芳は意識を集中し…
「…アクセス…」
意識を集団無意識の海へと向け回線をひらく。蘇芳の体に流れ込む力の奔流。
自分の処理能力にあわせ、取り込む力を選択していく。
そして…
蘇芳の目の前にそいつが現れた。
蘇芳がそのまま五人は入りそうな大きな蜘蛛の腹に、牛と人と鬼を掛け合わせディフォルメさせたような頭。
―牛鬼と呼ばれる悪魔だ。
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