-始業式-

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無造作に散らした髪の下の、好奇心旺盛そうな瞳が、今は警戒の色を表面に出している ―神威だ。 「その技は相当危険なんじゃないかぃ?」 脳天気な口調とはウラハラに、神威は警戒を怠ることなく二人に近づく。 「…ちっ…興醒めだな…」 蘇芳は吐き捨て、踵を返す。 「君武…、こいつが来なければ、これはお前の心臓だった…」 背を向け歩き出しながら、蘇芳は敢えて嘘をつき、手にした何かを放る。 ―コトッ! 硬い音を立てて、それは転がった。 ―コンクリート? 神威は背筋に寒気を覚えながら、先程のコンクリートブロックを確認する。 ―中心に…穴が穿たれている。 素手の…しかも指先で、この穴をあけたというのか? 神威はますます悪寒が強くなるのを覚えた。 「そうそう…」 蘇芳は背を向けたまま歩みを止める。 「貴様、名前とクラスは?」 「…八掛神威…1ー2A」 背中越しの蘇芳の問いかけに、思わず素直に答える神威。 「Aクラス…接続者か…面白くなりそうだ。…八掛…?」 背を向けたまま、呟く蘇芳。 ―接続者って単語を知っている? 「待てよ!あんたの名前は!?」 思わず問い掛ける神威。まともな答えなど期待していなかった。 しかし意外にも…「1ー1A、御子神蘇芳」 神威の方に向き直り、正面から見据え、不敵な笑みを漏らす。 『御子神!?』 神威のポケットの中の攻殻が、その姓に反応する。 「おもしろい存在(モノ)を連れてるな。式神か?まぁ、八掛宗家の息子がどれほどの物か、そのうち見せてもらう」 そう言って… 冷たい笑みを浮かべたまま、蘇芳は背を向けその場を後にする。 「…助かったぁぁぁぁ」 蘇芳の姿が見えなくなると、神威は一気に脱力する。 平静を装ってはいたが、神威も凄まじい緊張感にさらされていた。 冷たい光を放つ日本刀を、首筋に突きつけられた方がましかもしれない程の雰囲気を、あの蘇芳という少年は身に纏っていた。
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