53人が本棚に入れています
本棚に追加
直後蘇芳から雷光が疾る。
『ほぉう…。儂の力に怖じ気付いて、儂が姿を現す前に接続したか』
牛鬼は悪戯を咎める好々爺のように笑みを浮かべる。
『賢明な判断じゃが、接続しても結果は変わらんぞ』
しかしその笑みもすぐ邪悪な色に染まった。
「貴様こそ勘違いするな?接続しなくても、貴様などすぐにバラせる。ただかっかるぃだけだ」
無表情のまま吐き捨てる蘇芳。
『口調だけは一人前じゃな。じゃが口先だけでは儂には勝てんぞ?』
そう言って、牛鬼は鋭い歯のならんだ口を、にぃっとつり上げる。
「貴様こそ口先は達者なようだが…その口に聞きたいこともある。しばらくは生かしておいてやる」
蘇芳は無表情にそう言い構えをとる。
『ぬかしたな、小僧!』
牛鬼は鋭く尖った爪のついた脚をすさまじい速度で降り下ろす。
しかしそこに蘇芳の姿はなかった。
「祖父は元気か?」
振り下ろされた脚の節に立ち、蘇芳はバカにした笑みを浮かべる。
『貴様の祖父など知らんわい!!』
怒鳴り蘇芳の頭を噛み砕こうと、口を開ける。
「迅雷…」
その口に、自ら手を差し入れ呟く蘇芳。
次の瞬間蘇芳の掌から、目も眩むほどの雷光が発せられる。
『ガァァァァァァッ』
咥内を雷で打たれ、たまらず叫ぶ牛鬼。
「自慢の皮の厚さもこれでは役にたたないだろ?」
蘇芳は寒気を覚えるほど壮絶な笑みを浮かべ―
「もう一度尋ねる。祖父は息災か?」
『ッガァァァァァッ!!』
蘇芳の問いに、叫びをあげ、別の脚の鉤爪を、蘇芳を串刺しにしようと振るう牛鬼。
蘇芳は電撃を止め、大きく後方へ飛び距離をとる。
「ふん…口が堅いな」
面倒そうにつぶやく蘇芳の全身を、電荷が覆う。
『許さん!!許さんぞ!小僧!!』
怒りに震え、牛鬼は蘇芳を睨みつける。しかし次の瞬間…
―牛鬼の視界から蘇芳は消えて居なくなる。
『!?』
そして―
「舜雷…」
―声は後ろから聞こえた。
声と共に、先ほどよりも激しい雷撃が牛鬼の内部で荒れ狂う。
『!!』
声を上げることすらかなわず、牛鬼はその場に崩れ落ちた。
その巨躯の胸元(?)から尾部にかけて、大きな穴が穿たれている。
周囲には肉の焼け焦げる臭いと、オゾン化した空気の臭いが、混じりあい漂っている。
最初のコメントを投稿しよう!