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「これで大人しく話す気になったか?」
しかし牛鬼はその問い掛けに答えない。
しばし落ちる沈黙。
「…ふん…」
踵を返し蘇芳は鼻をならす。
音もなく…
振り上げられた牛鬼の脚が、蘇芳を串刺しにすべく振り下ろされる。
―ザスッ!!
「さすが悪魔。随分タフだな。それともお前が下等だからか?」
虚しく地面に突き刺さった鉤爪を牛鬼が確認するよりも早く、背後から声がかかる。
しっかりと牛鬼の頭を後ろから掴み、冷笑を張り付けた蘇芳は、三度目になる問いを投げ掛けた。
「今一度問う。クソジジイの差し金か?」
「じゃ…じゃから貴様の…」
慌てて恐怖を露にして答えようとする牛鬼。
しかしみなまで言い終えるより早く…
「そうか…人違いだったか…悪いな…」
言葉と共に、一瞬だが今までの数倍に匹敵する雷光が蘇芳の腕から疾る。
その一瞬で…
牛鬼の頭は跡形もなく弾け飛んだ。
―ふぅ…
息を吐いた蘇芳は、落ちてきたメタルアッシュの髪をかきあげながら、ふと動きを止め苦笑する。
「…人違い?人じゃねぇっつーの」
独自のツボで一通り笑い終えた蘇芳は、再び溜め息を吐き―
「…かったるぃ…帰って寝よ…」
再び寮に向かって歩き出した。
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