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「素晴らしい逸材じゃないか」
その様子を…
遠く離れた場所から見ている者がいた。
「非接続時の能力も大学院生に引けをとらないね」
その男はこの学園で最も豪華で、最も高みにあるこの部屋の主であった。
年の頃は、見た目で言えば30前後。
背中まで伸びたブロンドをかきあげながら、整った顔立ちから笑みを漏らす。
「最も、彼の笑いのツボは理解できないが…」
眉間に皺を寄せ額に手をあて、やれやれ、といった感じに首を振る。
「小森くん。彼の素性は?」
壁面のモニターを見ながら、彼は傍らに控えた秘書に尋ねる。
こちらは20代後半の、息を呑むほどの美人だ。
結い上げた艶やかな黒髪は、モニターの光を照り返している。
「姓名は御子神蘇芳。15歳。実家は出雲大社の分社、巫女神神社。家族構成は、祖父、鏡水【きょうすい】。二卵性の双子の妹、環葵【たまき】。次女、美月。三女、穂香【ほのか】。両親は死別しております。おそらく接続先は素戔鳴尊(スサノオノミコト)かと…」
淡々と…
手元の資料を読み挙げる小森。
「ほぉ!!彼の接続先はあの素戔鳴尊ですか!それならばあの強さも納得がいきますね」
鷹揚に、金髪の男は何度もうなずく。
「そうだ!彼を風紀公安委員長に据えてみてはどうでしょう?」
名案を思いついたとばかりに、人差し指を立て小森に告げる。
「しかし理事長!風紀公安委員長は三年生が受け持つのがしきたりです!」
ギョッとした様子で答える小森女史は言葉を続ける。
「それに彼は、どちらかと言われれば、こちら側の存在です。こちら側だけで話を進めては、あちら側の対応が…」
眼鏡の奥で小森は目を伏せる。
「心配はいらないよ」
理事長と呼ばれた男は小森の方を見てにっこりと微笑み、
「聞いていただろ?どうかな?」
扉の向こうに声をかける。
「気付いていたのか?人が悪い…」
扉を開き、五人の男女が室内へと入ってくる。
「…のは当たり前か…」
苦笑を浮かべリーダー格の男が理事長を見る。
純白の髪は逆立ち、その肌は対照的に浅黒い。
精悍な顔立ちだが、最も印象的なのはその蛇を思わせる瞳。
その背後には三人の男と、一人の女性が控えている。
「そんな!?何故ここに!?」
五人の姿を見て、小森は驚愕の声をあげる。
「私が呼んだんだよ」
そう言い理事長は器用に小森にウィンクする。
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