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~かくも懐かしきあの頃~―君武―
視界には真っ青な空と、所々に白い雲。
緑の香りを運び、さわさわと吹く風が心地いい。
やっぱこんな日に授業受ける気になんてならねぇな…
そんな事を考えつつ、俺は屋上に寝転がっていた。
あん?
誰だお前はってか?
君武だってーの。
俺の回想シーンなんだから、俺の一人称なの当たり前だろぉが…
まぁ、そんな事は置いといて…
そのままウトウトと心地いい眠りに落ちた。
「出すもん出したら許してやるっつってんだろぉが?」
遠くで聞こえる声。
っせーなぁ…
人がいい気分で寝てるってのに…
目を開けると、視界に飛び込んで来たのは真っ赤な空…
寝すぎた…
そんな事を考えながら首だけで声がした方に視線をむける。
屋上の入り口のドアが開き、踊り場が見える。
そこには5人の人影。
見るからにガラの悪そうな奴等が、1人の学生に絡んでいる。
カツアゲか…
どうせつるまなきゃ絡んだりも出来ねぇ腑抜けだろ…
しかもネクタイの色からすると、3年が1年に絡んでやがんのか…
やれやれ…
考えながら身体を起こした時…
「今はホントにお金がないんです。明日必ず払いますから…」
媚びた笑いを浮かべる一年。
…
俺は再び横になり目をつむる。殺されるわけでもねーのに、立ち向かう気概もない奴を助ける気にもなんねー…
そんな事を考えた時…
「何やってんですか?なんか楽しそうですねぇ?」
耳に飛び込んできたのは場違いな明るい声。
そこに居たのはサラサラヘアのファニーフェイス。
バカッぽく振る舞っちゃいるが、目は笑っていない。
こいつは面白そうだな…
俺はゆっくりと身体を起こし、様子をうかがう。
「ひょっとして…カツアゲってやつですか?初めて見た」
ファニーフェイスがさも珍しい物を見たような声をだす。
「なんだ、てめぇは?てめぇも募金してくれるのか?」
三年の1人が、ニヤニヤしながらファニーフェイスの襟首を掴む。
手を貸すか…
思い立ち上がった時―
「逃げなくていいの?声かける前に風紀公安に電話したけど?」
懐から携帯を取り出し、ひらひらと三年の前でちらつかせ、ニヤリと笑うファニーフェイス。
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