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―パシィィィッ!!
その拳を辛うじて掴み、俺は笑みを浮かべてファニーフェイスを見る。
「いいもん持ってるじゃねぇか」
「そっちこそよく止めたね」
ファニーフェイスも同じく笑みを浮かべて俺を見る。
「一つだけ言っておくが、俺はあいつらの仲間でもないし、お前と同じ一年だ」
ファニーフェイスを睨み付け、その事実を告げる俺。
何故睨み付けたか…
連中と一からげにされた…と言うのは建前。
ファニーフェイスの拳を掴む為に力んでいたのが本当のところ。
力が半端ないのだ。
「俺は1-3D、護堂君武。お前…名前は?」
「ん~…1-2A、御子神蘇芳」
俺の問いに答えながら、蘇芳は拳を引いた。
「なんかいきなり手ぇ出しちゃってごめんね。仲間がまだ居たのかと思って…」
頬をポリポリと掻きながら、蘇芳はバツが悪そうに愛想笑いを浮かべる。
「しゃーねぇって。あのタイミングで出てっちまったからな」
俺も笑みを浮かべると、ポケットに手を突っ込み階段を降りる。
「それにガラも悪いしね」
同じく階段を降りながら言った蘇芳のその言葉に、俺は危うく階段からずり落ちそうになる。
「お前…人の良さそうな顔して、サラリと酷いこと言うなぁ」
俺は辛うじて踏みとどまり、横に並んだ蘇芳を見る。
「冗談だってば」
人の良さそうな憎めない笑みを浮かべると、蘇芳は踊り場まで一気に飛び降りる。
人の良さそうな顔と物腰の割りに、なかなか食えないやつ…
やれやれ…
俺は苦笑を浮かべると、一気に階段を駆け降りた。
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