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始めに飛び出して来たのは、小さな妖精。
大きさは、ディズニーのティンカーベルと同じ位である。
『ご指名ありがとうございまぁす』
スピンを交えつつパンク男の前まで飛翔して、語尾にハートマークなんぞ付きそうな調子でウィンク一つ。
しかしその後…
『うげ…好みじゃない…』
消え入りそうな声で呟く。
ピクシーと呼ばれる小さな妖精である。
性格は好奇心旺盛で、そこらの女子高生と大差ない。
次に飛び出して来たのは赤黒い肉の塊。
表面にはいくつもの怨めしげな顔が浮かびあがり、呪いの言葉を延々と吐き出し続けている。
時折、太陽のプロミネンスの様に、肉の蛇がその表面から飛び上がるが、弧を描き、再度そいつの肉を食い破りそいつの中へと帰っていく。
その度にその肉の塊―レギオンと呼ばれる悪魔―は断末魔の様な叫びをあげる。
『ウォマエハウォレヲコロスノハフカノウカァァァァ??』
訳の分からない事を喚き散らすレギオン。
最後の一つは赤い毛並みの大きな犬。
刺の付いた大きな首輪を付け、その目には炎が燃えている。
ガルムと呼ばれる犬型の悪魔だ。
『オレサマ、オマエマルカジリ』
ガルムは君武と神威を睨み付け威嚇する。
「なんだ…これ?」
君武は呆けた様な声をあげる。
―マズイ…
ひょっとしたら、君武ならこいつらとまともに戦えるかもしれない…が…
それはあくまで普段の話。
神威が初めて攻殻と斬鉄姫を見た時の様に、心身喪失状態になったら…
庇いながら攻殻と斬鉄姫を見せずに戦いきれるのか?
『どうするのじゃ?神威』
斬鉄姫の質問に答えられるなら答えている。神威自身答えを出せていないのだ。
神威は背中のバットケースから木刀を取りだし君武を庇うべく前に出ながら懐に手を入れる。
父から教わった破魔札が3枚と捕縛札が5枚。
これを上手いこと使えれば…そんな事を考えていた時…
「なんだよこれ…おもしれぇじゃねぇか!!」
聞こえた声に君武の方を見ると…
笑っている。
笑っているのだ、この状況で…
神威も…蘇芳ですら自分を無くす様な状態で…
狂気に陥った笑いではない。
心底この状況を楽しんでいる…
そんな笑みだった。
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