闇に呑まれし者

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―ヤバい… 君武がそう思った時… ―ぎんっ!! 空気を歪ませる音と共に、君武を守る様に淡く光る青い障壁が現れる。 その障壁は、完全にではないが、ガルムの炎を防いでいた。 せいぜいドライヤー程度の熱気しか感じられない。 「なんだ?これ?」 君武はその障壁を、思わずマジマジと観察する。 『そんな事をしていて良いのか?神威に獲物を取られるぞ?』 攻殻は軽く笑いながら―といっても君武にはそうは見えないだろうが―君武をからかう。 『因縁浅からぬ相手なのだろう?早う行け。攻殻分かっておるな?』 ガルムに飛びかかりつつその鎌を振るう斬鉄姫。ガルムはかろうじて飛び退く。 『当たり前だ』 「でっけぇカマキリ!!」 攻殻の返答に被りまくる君武の驚きの声。 『えぇい!!早く行けと言うに!!ザン!!』 斬鉄姫は、鎌の斬撃をバックステップでかわしたガルムの着地にあわせて、真空波を放つ衝撃魔法で追い討ちする。 放たれた魔法はガルムの体表に無数の切り傷を刻みつける。 ガルムはたまらず苦鳴をあげた。 「サンキュ、カマキリ」 言って一気にパンク男に向かい駆け出す君武。 攻殻もそれに続く。 『だからカマキリじゃなく斬鉄姫じゃと言うに!!…すまぬがこのストレス、お主で発散させて貰うぞ』 斬鉄姫はガルムに向かい冷たく言い放つ。 『オレサマオマエラユルサナイ。オマエラゼンインマルカジリ』 言って低く唸るガルム。 『じゃが弱いと思われるのも心外じゃ…ここは一気にいくとするか…』 斬鉄姫の顔に浮かぶ淡く赤い五芒星が、その輝きを増す。 『フザケルナカマキリ!!』 怒鳴り駆け出す妖獣ガルム。 『妾に課せられた任は牽制であったが…』 怒気を孕んだ声と共に、斬鉄姫の鎌に五芒星と同じ禍々しい赤い光が灯る。 『…虚空斬破…』 斬鉄姫は呟き両手の鎌を振るう。 ―ギチィ!! 振るわれた鎌は空間その物を断ち割り、存在する空間ごとガルムを切り裂いた。 ―ぐじゅる… 妙な音をたてて切り裂かれた空間が自己修復をする。 同じく空間ごと断たれた樹木が元通りになるなか、ガルムだけはそのまま真っ二つになり崩れ落ちた。 『…片付けてしまっても問題はあるまい。妾を莫伽にした報いじゃ…』 冷たく言い放ち斬鉄姫は神威をフォローすべく踵を返す。 ―が… 『ストレス発散出来ておらん…』 その悲し気な声は誰の耳にも届いていなかった。
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