闇に呑まれし者

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「はっ!」 鋭い呼気と共に渾身の斬撃をレギオンに向けて放つ神威。 その一撃は確実にレギオンを捉え、腐った肉を削ぎ落とす。 しかし傷口の奥から盛り上がった肉が、見る間にその傷を塞ぎ、元通りの形になる。 そして神威に向かい、表面を這い回っていた肉蛇が牙を剥き襲いかかった。 「くっ!!」 かろうじて肉蛇を叩き切り、神威は大きく距離を取る。 「やっぱり正攻法じゃ無理か…」 木刀を肩に担ぎ額を掻く神威。 「ウォマエハキイロイセカイヲミタコトガアルノカ!」 そんな訳の分からない叫びと共に、レギオンから幾多の肉蛇が放たれ、神威に向かって四方から迫る。 「うわっ…っと」 或いは避け、或いは切り落とし、何とか事なきを得る。 「ふむぅ…あんましやりたくないけどしょうがないかぁ…」 言いながら神威は、木刀に付いた腐肉を振り払うと、腰のベルトに通す事で帯刀する。 手に持っていると、ついつい木刀を頼ってしまうからだ。 息を吐きながら円を描く様な、大きな動きで構えをとる。 即座に放たれた肉蛇の第2破を、神威は紙一重でかわしレギオンに肉薄すると、懐から取り出した破魔札を全てレギオンに貼り付け、バックステップで距離をとる。 「爆!」 力強く放った神威の言葉に呼応し ―キィィィィィィィン!! 破魔札は激しい光を放つ。 光が消え去ると、レギオンの姿は何処にもなかった。 「呆気ないなぁ…取り敢えず、担当分終了っと…」 言って神威は息を吐いた。 何とか接続しないで済みそうかな… 一度暴走を経験しているだけに、使うのが躊躇われるのだ。 まぁ、あれ以来暴走はしていないのだが… そんな事を考えていたところに、斬鉄姫が合流する。 『神威…念のために接続しておくのじゃぞ?』 「えぇ!!なんで?」 不満の声をあげる神威に斬鉄姫は続ける。 『万が一、あの小僧が戦闘不能に陥った時に助けるためじゃ。この学舎での初の友人なのであろう?』 やや優しさを含んだ声に、神威は溜め息をつき… 「そうだな…万が一の時はフォロー頼むよ?」 『分かっておる。安心せい』 斬鉄姫の返答を聞き、意識を集中する。 「アクセス…」 言葉と共に、神威の身体は淡く青い光に包まれた。
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