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ボカァン!!
闇の中、爆音と銃声の鳴響く基地は、すでに目を背けたくなるような有り様だった。
炎上する装甲車、悲鳴を上げながら機関銃を撃つ兵士、累累たる死屍、そんな地獄絵図の中を一つの影が駆ける。その影が駆けた後には破壊と殺戮しかなく、(他に影が無いことから)この影だけでこの惨劇を作り出したのだと伺える。もし、影が人の形をしていなければ誰もそれが人だとわからなかっただろう。
その動きはまさに疾風のようで、止まっていなければ黒い影にしか見えない。
「バッバケモノめ…!」
指令塔からこの光景を見下ろしていたこの基地の指令官が吐き捨てる。何処かからいきなりあらわれたアレと戦闘を開始してから10分。50人の兵と戦車・装甲車合わせて7台を殲滅した黒い影は残った数人の兵と戦闘を繰り広げている。
(…もう限界か。)
そう思い、撤退命令を出そうとマイクに手を伸ばすと、不意に手に影がかかる。慌てて見上げてみた光景が…この男の見た最期の光景だった。
紅い月を背負い虚空を舞い、こちらに向かって来る漆黒の戦闘服を纏った男……黒いマスクから覗いた双眼の紅い眼が男の脳裏に焼きついていた。
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