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さく
さく
さく…
真っ暗な闇に包まれ、鳥達も既に寝静まり、森には静寂が訪れている
だからこそ、微かながら聞こえてしまう、草を踏みしめる足音
さく
さく
さく…
人ならば聞こえぬ程度のその草が擦れる音を、拾う者が二人いた
だがその音は、逆にその拾う者達をおびき寄せたかのよう
息を潜め、その音へと今にも向けようかと思われるクナイが、木々の合間から差し込まれる月明かりによって鈍く光る
だが、その刃がその音を消す事は無かった
ヒュンッ
『Σがっ…!!』
音から一番離れた木の、相当な高さの枝にいた者が、一言呻いた後頭から地面へと落ちていった
首には、小さなクナイが一つ。的確に太い血管のある箇所に深々と突き刺さっていた
残りの者がそれを見て目を見開いていると、いつの間にか音は違う音に変わっていた
いや、音が声に変わった
「遅い」
「ひっ…ぐっ!!」
数十mはあるであろう地面にいたその男は、息を潜めていた残りの者の目の前に一瞬で現れ、そして腰に携えていた刀もいつの間にか鞘から抜かれ、腹から背へ貫通していた
「忍ならもう少し上手く気配消せよ。殺してくれって言ってる様なもんだ」
「うぐ…ば、化け、も…っ」
せめて一太刀と、刀に手をかけた者の腹に刺さる刀が、無情にも右の肩から抜ける様に相手を斬り裂いた
「…化け物…?」
自らにかかった返り血など気にも止めず。木の枝の上で先程切り殺した忍を見下ろしながら…その者はポツリと呟いた
「そんな事、生まれた時から知ってる事だ」
そう、俺は人じゃない
人の魂など、最初から持ち合わせていない
だって
持つ事を許される場所で生まれられなかったから
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