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「光里、大丈夫?」
咲希が心配そうにボクを覗き込んだ。
心配するのも無理はない。
この神社は地域でも有名な長い階段があるからだ。
登らなければ、社へはたどり着けない。
「大丈夫。ゆっくりでも、着くから。」
ボクは一歩一歩、ゆっくり階段を登った。
「バーカ。無理すんな。」
後からボクを支えてくれている龍一が言った。
「…ありがとう。」
咲希と寄りを戻せたというのに、まだみんなに迷惑をかけてしまっていた。
それでも、みんなはボクを支えてくれた。
松葉杖なんかより、強い絆で…。
「おい!誠!遅いぞ!」
ボクがやっと登りきれそうな時、遠くの後で男の人の声がした。
「バーカ!仁、テメェーが速いんだよ!」
どうやら一人だけではないようだった。
まだ日の開けない時間は、寒い。
冷たい風が、ボクの足元を翔けた。
まるで、何かを取り巻くようにボクの周りを翔けていた。
「光里…どうした?」
ボクは風に意識を奪われていた。
ボーッしているボクに咲希が声を掛けてくれた。
「…うんう。なんでもない。」
ボクはここに来たときから、少し不思議な気持ちを感じていた。
なにか、不思議な気持ちを。
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