決別

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僕は一心不乱に走りつづけた。 何処をどう通ってきたかも分からないくらい必死に走りつづける。 母親に殴られた所がずきずきと痛む。 吐き気、めまい、頭痛、あらゆる痛みが僕の体力と気力を蝕んでいく。 しかし倒れるわけにはいかなかった。 桜を守る。 その一つの思いを自分の心に深く深く刻み付け、痛みにたえながら必死に走った。 どれくらいの距離を走ったのだろうか? そろそろ僕の体力と精神力は限界に近かった。 めまい、頭痛、吐き気、その他諸々の症状に耐え切れず、僕は桜を下に降ろしてから近くにあったゴミ置場へと倒れ込んでしまった。 「はぁ、はぁ……」 僕の息は自然と荒くなっていく。 「お兄ちゃん!」 桜の叫び声も今の僕にはよく聞こえない。 僕は桜の頭に手を置き優しく撫でる。 「ごめんな。お前にはいつも辛い思いばかりさせて……」 「グスッ、そんなこと、ない……ひくっ……よ」 桜はまた泣き始めてしまった。 「僕はいつも、桜を泣かせてばかり……。 本当に駄目なお兄ちゃん……。」 僕はそこまで言うと気を失ってしまった。
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