自分の為?あなたの為?

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「なんだ、最初は失礼な男の子かと思ってたけど、礼儀正しくていい子じゃない」 結衣さんはそう言いながらふふっと小さな笑みをこぼす。 「ははっ、すいません」 僕も不思議と結衣さんにつられてしまい、笑みがこぼれてしまう。 「よし!」 結衣さんは急に、パンっと手を叩いてゆっくりと立ち上がった。 「ど、どうしたんですか?」 僕は少しびっくりしながら聞いた。 「ん?雪くんと桜ちゃん、お腹空いていると思って……」 結衣さんは小走りで台所へと行き、手に大きな何かを持って戻ってきた。 「じゃーん!お寿司をとっときましたー」 僕はあんぐりと間抜けに口を開けてしまう。 「そ、そ、そんな高いもの、いただけませんよ!」 「え、何で?」 結衣さんは不思議そうに小首を傾げる。 「だ、だって、助けて頂いた上にご飯もご馳走になるなんて……。 そ、それにこんな高価なものを……僕、お金ないですし……」 「えいっ!」 「むぐっ!」 結衣さんは僕の口にお寿司の一つを無理矢理ほうり込む。
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