自分の為?あなたの為?

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「グスッ……」 「ちょっ!せ、雪くん!?」 結衣さんがどうすればいいのか分からずに、オロオロと僕の周りをくるくると回りだす。 「な、泣かないでよ~」 結衣さんは僕の目の前にしゃがみこみ、よしよしと僕の頭を慰めるように撫でる。 「う……グスッ」 ……結衣さんに迷惑かけちゃったな。 もう僕は子供じゃないんだ。 もう泣くのはやめよう。 僕は頬に流れていた涙を両手で拭い去り鼻水を、ずずーと吸った後、結衣さんの顔を見上げる。 「ずびばぜん、ご迷惑を……」 「ううん、いいのよ」 結衣さんは首をふり、また僕に魅力的な笑顔を見せてくれた。 「さぁ!!早くご飯にしましょ!」 「……は、はい!!」 僕は初めて人からの優しさという物を感じた。 それがこんなに暖かいものだというのも感じることが出来た。 僕が泣いている時に、結衣さんがしてくれた何気ない行動。 結衣さんにとっては大して深い意味はない行動だったが、僕にとってはとても深い何かを僕に与えてくれた。
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